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令和8年度 白秋献詩審査結果

2026年9月30日

北原白秋の写真

令和8年度白秋献詩へご応募いただき、誠に有難うございました。
総数5,605篇の中から厳正なる審査の結果、入賞者が決定いたしました。                                文部科学大臣賞には神奈川県横須賀学院中学校第3学年 片岡 洵さんの  水平線のある教室  が選ばれました。 

特選 文部科学大臣賞    題名 水平線のある教室 

特選 文部科学大臣賞

水平線のある教室
         横須賀学院中学校
         三年 片岡 洵  

夏の終わりの教室から
海が見える
黒板よりも大きな青を
誰もノートに写せないまま
午後の授業は進んでゆく
先生がチョークで引いた白い線
窓の向こうの水平線が
一瞬、まっすぐにつながった
教室の内側と
まだ知らない世界とが
一枚のガラスを挟んで
同じ高さに浮かんでいた
蜩が鳴いている
校庭の木々からこぼれる声は
夏を呼び止めているようで
けれど本当は
もう行っていいよ、と
僕らの背中を押しているようであった
机の上には
進路希望調査の白い紙
将来は何になりたいか、と
紙は黙って尋ねてくる
十四歳の僕に
一生分の答えを求めるその白さは
晴れた日の海より眩しくて
僕は何度も鉛筆を置いた
窓の向こうでは
一艘の船が水平線へ近づいてゆく
遠くなるほど
小さくなるはずなのに
なぜかその船は
僕の胸の中で大きくなった
僕もいつかこの教室を出てゆく
机に残った傷も
廊下を駆ける足音も
窓いっぱいにひろがる海も
ひとつずつ
思い出と呼ばれる日が来る
それでも僕は
ここへ帰ってきたい
制服ではなく
チョークを持って
かつて僕が座っていた席で
答えを見つけられずにいる誰かを
急かさず待てる先生になりたい
夢を持て、と言う前に
夢を持てない夜のそばへ
そっと椅子を運べる人になりたい
黒板に正解を書くことより
間違えても歩いてゆけることを
伝えられる人になりたい
授業の途中
窓の外を見つめる生徒がいたら
叱る前に
僕も一度だけ海を見よう
その子の胸の中にも
まだ名のない未来が
小さな舟となって
沖へ漕ぎ出そうと
しているかもしれないから
西日が教室へ差し込み
机をひとつずつ
金色の島に変えてゆく
蜩の声は次第に遠くなり
八月は
透きとおった羽を一枚残して
空の向こうへ飛び去ろうとしていた
僕は進路希望調査をひらき
「教師」と書いた
その二文字はまだ
波打ち際の足跡のように頼りない
次の波が来れば
消えてしまいそうで
それでも確かに
僕の足でつけた跡だった
顔を上げると
黒板の白い線のつづきに
夕暮れの水平線があった
あの線は
世界の終わりではない
今ここにいる僕と
いつかこの教壇に立つ僕を結ぶ
一本の長い道なのだ
海は今日も
校舎の窓いっぱいにひろがっている
僕を遠くへ送り出しながら
いつの日か帰る場所を
変わらない青で
教え続けている
 

 

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問い合せ先

 

柳川市教育委員会学校教育課総務係

電話番号:0944-77-8862

ファックス番号:0944-74-5545

電子メールアドレス:gakko@city.yanagawa.lg.jp

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