柳川古文書館では開館以来、通常展と企画展とを開催してきました。通常展では、館蔵史料をもちいて、日常の学芸活動の中から得られた知見をもとに、史料そのものをどう考えるか、ということをテーマにしてきました。
今回の通常展では、「日記」を取り上げます。「日記」とは、一般的には「個人や集団の体験を日時に沿って記録したもの」と定義されます。そうした意味からすると、「日記」という表題のものだけではなく、日誌や、メモ風のものに至るまで、様々なかたちがあることに気づかされます。
わたくしたちは、そうした「日記」を、歴史をひも解いていくための材料として用いることができます。そして、日時に沿って記録されていることから、書き手の経験を追体験することもできます。書かれた時より後に生きているわたくしたちは、記述されている内容を吟味することができます。
今回の展示では、江戸時代から明治・大正・昭和にいたる「日記」を紹介します。書き手の多様さ、そして書かれ方にいたるまで、その豊かなあり様をご覧いただき、当時の人びとの生き様を感じ取っていただけければ幸いです。
併設・白秋生誕140周年ミニ企画展「岡茂政にあてた北原白秋の手紙」
令和7年(2025)は、柳川出身の詩人・北原白秋(1885~1942)の生誕140周年にあたります。
今回のミニ企画展では、岡茂政にあてた北原白秋の手紙を展示します。
岡茂政は、明治8(1875)年柳川に生まれ、中学伝習館を卒業後第五高等学校を経て、東京帝国大学に進みます。家の事情で中退し、明治36年6月中学伝習館教諭となりました。仕事のかたわら柳川の歴史を研究し、『柳河新報』(明治36年創刊)紙上に成果を発表します(のち『柳川史話』として刊行)。岡茂政に関わる史料は、千葉県在住のご子孫から平成16年に当館に寄託されました(のち寄贈)。一冊のアルバムにまとめられた葉書198点で、その中に北原白秋が出した葉書が20点確認できます。
北原白秋は明治35年中学伝習館を休学し、同36年復学、翌37年退学・上京し早稲田大学高等予科に入学しました。岡と白秋とは中学伝習館の先生と生徒という間柄でした。また、白秋と同い年の友人川野三郎は岡の実弟でした。川野は、柳河町で川野薬局を営んでいた乙次郎の息子で、『多磨-北原白秋追悼号』(昭和18年刊行)に「白秋を偲びて」という一文を寄せています。
20点の葉書のうち、大半は白秋が大正7(1918)年から同15年まで住んでいた小田原時代のもので、雑誌『赤い鳥』(鈴木三重吉創刊)の童謡・児童詩欄を担当して多くの童謡を発表、白秋自身「小田原は全く私にとりましては、生れた土地、母の里についで最も懐しく、また最も意義深い藝術の母胎」と述べるほど安定した時代でした。
岡にあてた葉書からは、そのやり取りが親しく頻繁であり、かつ柳河の歴史や文化についてたずねるなど、白秋にとっても作品の背景となっていることがわかります。展示した史料を通じて、二人の交流に触れてみてください。
会期
令和7年(2025)4月10日(木)~9月28日(日)
※併設ミニ企画展「岡茂政にあてた北原白秋の手紙」の会期は、7月1日(火)~9月28日(日)です。
会場
柳川古文書館(柳川市隅町71-2)入館無料
開館時間
9時30分から16時30分まで(入館は16時まで)
休館日
毎週月曜日(ただし、月曜が祝日の場合は、その翌日を休館とします)
*5月5日(月・祝)、5月6日(火・祝)は開館し、5月7日(水)を休館。
*7月21日(月・祝)は開館し、7月22日(火)を休館。
*8月11日(月・祝)は開館し、8月12日(火)を休館。
*9月15日(月・祝)は開館し、9月16日(火)を休館。
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