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生活保護

2022年12月1日

 

生活保護制度の目的

 生活保護制度は、日本国憲法第25条に規定する理念に基づき、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的としています。

憲法第25条

 すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。

 

生活保護制度の基本原理

 生活保護法には、生活保護制度を運用するに当たって、4つの基本原理が明記されています。

 

(1)国家責任による最低生活保障の原理(法第1条)

 生活に困窮する国民の保護を、国が直接の責任において実施するとともに、保護を受ける者の自立助長を図ることを規定しています。

 

(2)保護請求権無差別平等の原理(法第2条)

 すべて国民は、この法律の定める要件を満たす限り、生活困窮に陥った原因の如何はいっさい問わず、もっぱら生活に困窮しているかどうかという経済状態だけに着目して保護を行うということを規定しています。

 

(3)健康で文化的な最低生活保障の原理(法第3条)

 この法律により保障される最低限度の生活は、健康で文化的な生活水準を維持できるものであると、制度によって保障される最低限度の生活水準の性格を規定しています。

 

(4)保護の補足性の原理(法第4条)

 この法律による保護は、生活に困窮する者がその利用し得る資産、能力その他あらゆるものを、その最低限度の生活の維持のために活用することを要件とし、また、民法に定める扶養義務者の扶養および他の法律に定める扶助は、すべてこの法律による保護に優先して行われなければならないと規定しています。また、この補足性の原理により、保護を受けている人は、原則として自動車の保有・使用は認められていません。

 

生活保護実施上の原則

(1)申請保護の原則(法第7条)

 保護は、急迫の場合を除き、保護を要する本人、その扶養義務者の申請があって始めて開始されます。

 

(2)基準及び程度の原則(法第8条)

 保護の実施は、厚生労働大臣の定める基準により測定した、要保護者の需要をもととして、そのうちその者の金銭または物品で満たすことのできない不足分を補う程度で行うものと規定しています。

 

(3)必要即応の原則(法第9条)

 保護は、要保護者の年齢、健康状態等その個人または世帯の需要を考慮して行われることを規定しています。

 

(4)世帯単位の原則(法第10条)

 保護の必要性や程度は、世帯を単位として判定するというのがこの原則です。

 

生活保護の種類

 生活保護には、8種類の扶助があります。国の定めた基準により、世帯の生活の必要に応じて支給します。

 

【生活扶助】

 食費、衣服費、光熱水費などの生活費、入院患者日用品費、介護施設入所者基本生活費

【住宅扶助】

 借家の敷金、家賃、地代にかかる費用

【教育扶助】

 学級費、給食費、義務教育に必要な学用品、副教材費

【医療扶助】

 病気、けがの治療のために病院でかかる費用

【介護扶助】

 介護が必要と認定され、介護サービスを受ける費用

【出産扶助】

 出産のための費用

【生業扶助】

 高等学校就学に必要な学用品・副教材費、就職するために必要な費用

【葬祭扶助】

 葬祭の費用

 

 この他に、臨時に支給される場合があるものとして、主に次のようなものがあります。

 

【被服費】

布団、寝巻き、産着、おむつ(常時失禁状態にある者)

【入学準備金】

 小学校又は中学校に入学する際の準備金

【家具什器費】

 長期入院の単身者が退院したときのなべ、茶わんなどの炊事用具

【配電設備費】

 はじめて配電設備を新設する場合

【水道等設備費】

 水道の敷設がどうしても必要な場合

【転居の際の敷金】

 転居を余儀なくされたような場合等

【住宅維持費】

 家屋の畳、建具、水道設備、配電設備等の従属物の修理又は家屋の補修

【就労活動促進費】

 早期に就労による保護脱却が可能な方が積極的に就労活動に取り組んでいる場合

被保護者の権利

(1)不利益変更の禁止(法第56条)

 既に決定された保護は、正当な理由がなければ不利益に変更されることはありません。

 

(2)公課禁止(法第57条)

 保護として給付された金品には、租税その他公課を課せられることはありません。

 

(3)差押禁止(法弟58条)

 保護として給付を受けた金品または保護を受ける権利は、差し押さえされることはありません。 

 

被保護者の義務

(1)譲渡禁止(法第59条)

 保護を受ける権利は、他人に譲ることはできません。

 

(2)生活上の義務(法第60条)

 常に、能力に応じて勤労に励み、支出の節約を図り、その他生活の維持、向上に努めなければなりません。

 

(3)届出の義務(法第61条)

 収入(給料、年金、手当等)、支出(家賃等)等生計の状況について変動があったとき、または、住所若しくは世帯の構成(転入、転出、入学、卒業、結婚、離婚等)に異動があったときは、すみやかに、福祉事務所長にその旨を届け出なければなりません。

 

(4)指示等に従う義務(法第62条)

 福祉事務所は、生活の維持、向上その他保護の目的達成に必要な指導または指示をすることができることになっています。福祉事務所から指導または指示を受けたときは、これに従う義務があります。なお、正当な理由がなく従わないときは、福祉事務所は保護の変更、停止または廃止をすることができることになっています。

 

保護の費用の返還と徴収

(1)資力がありながら保護を受けた場合の費用の返還

 急迫した場合等のため、資力があるにもかかわらず保護を受けた場合には、その受けた保護金品に相当する金額の範囲内の額を返還しなければならないこととされています(法第63条)。

 

(2)不正受給の費用徴収と罰則

 被保護者には、収入、支出等の届出の義務がありますが、故意に怠ったり、あるいは偽りの申告をした場合など、不正な手段により保護を受けた場合には、保護のために要した費用の全部又は一部を徴収されます(法第78条)。なお、不正受給については、単に費用徴収にとどまらず、情状により、生活保護法の罰則規定(法第85条)あるいは刑法の規定に基づき処罰をうけることがあります。

 

(3)扶養義務者からの費用徴収

 扶養義務者が十分な扶養能力を有しながら扶養をしなかった場合などには、その扶養義務者の扶養能力の範囲内で、保護のために要した費用の全部又は一部を徴収されることがあります(法第77条)。 

 

 

 

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