○柳川市消防本部救急業務安全管理委員会要綱
令和5年12月12日
消防本部告示第5号
(設置)
第1条 この告示は、救急業務全般にわたり、傷病者等に対する有害事象となった症例を医学的及び法律的観点から検証して原因を明らかにし、再発防止に努めるため、柳川市消防本部救急業務安全管理委員会(以下「委員会」という。)を設置する。
(1) アクシデント 別表第1に定めるレベル3b以上の事象をいう。
(2) インシデント 別表第1に定めるレベル3a以下の事象をいう。
(所掌事務)
第3条 委員会は別表第2に定める有害事象発生時のフローチャートに基づき、次に掲げる事務を所掌する。
(1) 関係者からの情報収集と分析事務
(2) 事後検証と事故原因の究明事務
(3) 再発防止対策の検討事務
(4) 医学的見地からの検討事務
(5) その他委員長が必要と認める事務
(検討事項)
第4条 委員会は、次に掲げる事項を検討する。
(1) 明らかな有害事象への対応と原因分析及び再発防止に関すること。
(2) 有害事象につながる可能性がある症例の報告における検討に関すること。
(3) その他委員長が必要と認めること。
(組織)
第5条 委員会は、次の者をもって組織する。
(1) 消防長
(2) 消防署長
(3) 総務課長
(4) 警防課長
(5) 消防課長
(6) 有害事象に関係した職員の直属の救急係長
(7) 指導救命士
(8) その他委員長が指名する救急救命士
2 アクシデントが発生した場合においては、医学的観点から医師(搬送先病院、筑後地域メディカルコントロール事後検証委員会等の医師をいう。)を、法律的観点から弁護士等を臨時の委員とすることができる。
3 委員長は消防長をもって充て、副委員長は消防署長をもって充てる。
(委員長の職務及び代理)
第6条 委員長は、会務を総理し、委員会を代表する。
2 副委員長は、委員長を補佐し、委員長に事故あるときは、その職務を代理する。
(事故発生報告等)
第7条 有害事象の発生を確認した搬送救急隊長は、当務大隊長及び中隊長に報告するものとする。
2 アクシデントに関係する搬送救急隊長は、アクシデント発生報告書(様式第1号)を速やかに作成し、委員長に報告するものとする。
3 インシデントに関係する搬送救急隊長は、安全管理の徹底に資するため、インシデントレポート(様式第2号)を速やかに作成し、消防長に報告するものとする。
4 別表第1に定めるレベル3a以上の事象が発生した場合においては、筑後地域救急業務メディカルコントロール協議会救急活動におけるインシデント・アクシデント発生の対応要領に基づき報告するものとする。
5 消防課救急係は、インシデントレポートを事例集としてとりまとめ、職員間で共有をし、安全管理の資料とする。
(招集)
第8条 委員会の会議は、アクシデントが発生し、前条第2項に規定するアクシデント発生報告書の提出を受け、当該有害事象の情報が整理できた時点で委員長が速やかに招集する。
2 委員長が必要と認めるときは、参考人として有害事象に関係する職員及び医師等医療関係者の出席を求め、その状況の聞き取りを行うほか、関係書類の提出を求めることができる。
3 会議の議長は、副委員長をもって充てる。
3 前2項の結果報告を開示する場合は、個人情報の保護に特に留意しなければならない。
(庶務)
第10条 委員会の庶務は、消防課救急係において処理する。
(1) 警察 警防課長
(2) 報道 警防課長
(3) 市役所(人事秘書課、関連する担当課) 総務課長
(4) 傷病者及び家族等 消防課長
(5) 医療機関及び各メディカルコントロール協議会 消防課救急係担当者
(職員の責務)
第12条 職員は、有害事象の当事者及び関係者のメンタルケアに努めなければならない。
(その他)
第13条 この告示に定めるもののほか、委員会の運営に関し必要な事項は、委員長が別に定める。
附則
この告示は、公布の日から施行する。
別表第1(第2条関係)
有害事象レベル
分類 | レベル | 障害の継続性 | 障害の程度 | 備考 | 例 |
アクシデント | 5 | 死亡 | 死亡(原疾患の自然経過によるものを除く。) | ・薬剤の誤った使用、食道挿管等があり、結果死亡となった。 ・救急隊が現場を間違え、傷病者の接触が遅延し処置が遅れ、結果死亡となった。 | |
4b | 永続的 | 高度 | 永続的な障害や後遺症が残り、有意な機能障害や美容上の問題を伴う。 | ・アナフィラキシーショックの傷病者にエピペンでなくアドレナリンを投与し、一時心肺停止となった。 ・救急隊が傷病者を布担架で狭あいな階段を搬送中、傷病者を落下させ脊髄損傷となり両下肢に麻痺が残存した。 | |
4a | 軽度~中程度 | 永続的な障害や後遺症が残ったが、有意な機能障害や美容上の問題は伴わない。 | ・ショック輸液が必要な傷病者に対して留置針をせん刺時にとう骨神経を損傷し痛みや痺れが残存した。 ・傷病者をストレッチャーにて移動中、車輪が縁石に乗り上げ横倒しになり傷病者のとう骨を骨折させ、その後、手指に痛みや痺れが残存した。 | ||
3b | 一過性 | 高度 | 医師による濃厚な処置や治療を要した。(バイタルサインの高度変化、人工呼吸器の装着、手術、入院治療、骨折など) | ・低血糖の傷病者に対してブドウ糖液を投与したが血管外に漏れてコンパートメント症候群になり減張切開の手術が行われた。 ・傷病者をストレッチャーにて移動中、車輪が縁石に乗り上げ横倒しになり傷病者の上腕骨を骨折させた。 | |
インシデント | 3a | 一過性 | 中程度 | 医師による簡単な治療や処置を要した。(消毒、湿布、皮膚の縫合、鎮痛剤の投与など) | ・傷病者の衣服をはさみで裁断中に誤って皮膚を切ってしまい、縫合が必要になった。 ・転院搬送事案で既に傷病者の左手背に点滴が確保されていたが救急車に収容中に、引っかかり点滴が外れた。 |
2 | 一過性 | 軽度 | 処置等は行わなかった。ただし傷病者観察の強化、バイタルサインの軽度変化、安全確認のための検査などの必要性は生じた。 | ・酸素ラインを接続して流量設定を行い投与したが酸素ボンベの元バルブを開けてなかった。(途中で空になったことに気付いていなかった。) ・傷病者を緊急走行で搬送中、急ブレーキをかけた為、資器材が傷病者に落下し打撲したが、明らかな損傷はなかった。 | |
1 | なし | ― | 傷病者への実害はなかった。ただし何らかの影響をあたえた可能性は否定できない。 | ・胸部に違和感がある傷病者に対して心電図を測定したところシールの接続不良に気付かずノイズが表示され波形を読み取れなかった。 ・収容先医療機関へのホットラインかけ間違いにより、病院到着が遅れた。 ・朝の資機材点検漏れで、本来積載されているはずの資機材が使用できなかった。 | |
0 | ― | ― | エラーや器具、薬剤の不具合が見られたが、傷病者には実施されなかった。 | ・使用期限が過ぎた器具や薬剤を積載したままだった。 ・酸素流量計のパッキンの劣化で酸素が漏れていることに気付いた。 |
※レベル3b以上はアクシデントとして扱い、3a以下はインシデントとして扱う。