○柳川市食育推進条例

平成22年7月16日

条例第20号

目次

前文

第1章 総則(第1条―第9条)

第2章 施策の基本となる事項(第10条―第16条)

第3章 推進体制等(第17条・第18条)

附則

本市は、筑後川及び矢部川の下流域に広がる筑後平野の南西に位置する有明海に面した田園地帯である。先人たちの優れた英知とたゆみない努力により、水と土地を大切にしながら米・麦・大豆をはじめ多くの農産物の生産や、「宝の海」有明海からもたらされる魚介類の採捕、のり養殖など農漁業が盛んに行われてきた。それと同時に、様々な独特の伝統行事や郷土の食文化が受け継がれてきている。

一方、戦後の食糧難の時代から、今では飽食の時代と言われ、「食」は命をはぐくむものであるという視点が忘れがちになり、それに伴い、栄養の偏りや不規則な食事などによる肥満や生活習慣病が増加している。また、食料の自給率が低下している一方で、食べ残しの増加など様々な問題が生まれてきている。

こうした状況の中、私たち一人一人が自ら「食」について学び、認識を深め、生涯にわたって健全な心と体で心豊かな暮らしを実現するため、食育が重要であり、あらゆる分野において食育の視点を取り入れたまちづくりが必要である。

ここに、本市の食育の基本理念を明らかにし、方向性を示し、すべての市民の下、食育の推進に関する学習と実践の取組を総合的かつ計画的に推進することを目指し、だれもが生き生きと暮らせるまちを実現するため、この条例を制定する。

第1章 総則

(目的)

第1条 この条例は、本市の食育の推進に関する基本的な理念を定め、市、市民及び事業者等の役割を明らかにして食育に関する施策を推進することにより、市民一人一人が生涯にわたって健康に暮らすことができ、活力のある社会の実現に寄与することを目的とする。

(定義)

第2条 この条例において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。

(1) 食育 市民一人一人が、生涯にわたる健全な食生活の実現、食文化の継承、健康の確保等が図られるよう、自らの食について考える習慣、食に関する様々な知識及び食を選択する判断力を身に付け、豊かな人間性をはぐくんでいくための教育等の取組をいう。

(2) 市民 市内に住所を有する者、滞在する者及び通勤通学する者並びに市内において農業、漁業、教育、社会福祉、商業、工業その他の事業活動を行う者をいう。

(基本理念)

第3条 食育の推進は、次に掲げる基本理念に基づき行う。

(1) 市民一人一人の生涯にわたる健全な食生活を実現することにより、心身の健康の増進及び豊かな人間形成に資することを旨として行うこと。

(2) 家庭、学校、保育所、地域その他のあらゆる場所において、食について考える機会を確保し、市民の食生活が、自然の恩恵の上に成り立っており、また、人々の様々な行動に支えられていることへの感謝の気持ちや理解が深まるように行うこと。

(3) 伝統的な食文化及び地域特性を生かした食生活に配慮し、生産者と消費者が積極的に交流を図り、地域で生産された農林水産物を当該地域で消費することに取り組み、及び本市の食料の生産から消費等に至るまでの食に関する体験活動を行うことにより、食に対する関心及び理解が深まるように行うこと。

(4) 食品の安全性が確保され安心して消費できることが健全な食生活の基礎であることから、食に関する情報の提供が、食に関する知識及び理解を深め、市民の適切な食生活の実践に資するように行うこと。

(市の責務)

第4条 市は、前条に定める基本理念(以下「基本理念」という。)に基づき、地域の特性を生かした食育の推進にかかわる施策を総合的かつ計画的に策定し、実施するものとする。

2 市は、市民に対して食育に関する施策の普及啓発に努めるとともに、市民の理解を得るよう努めるものとする。

3 市は、食育の推進のため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。

(市民の役割)

第5条 市民は、家庭、学校、保育所、地域その他のあらゆる場所において、基本理念に基づき、生涯にわたり健全な食生活の実現に自ら努め、食育の推進に寄与し、市が実施する食育推進の施策に積極的に協力するよう努めるものとする。

(教育関係者等及び保健医療関係者等の役割)

第6条 教育並びに保育、介護その他の社会福祉、保健及び医療に関する職務に従事する者並びにこれらの関係機関及び関係団体は、基本理念に基づき、食に関するあらゆる機会及び場所を利用して、積極的に食に関する関心及び理解を深めるように努めるとともに、他のものが行う食育の推進に関する活動に協力するよう努めるものとする。

(農林漁業者等の役割)

第7条 農林漁業者及び農林漁業に関する団体は、基本理念に基づき、環境の保全を重視し、安全で、安心して消費できる農林水産物の安定的な供給等の実現に努め、また、農林水産業に関する知識及び体験の機会を積極的に提供し、食生活における自然の恩恵及び食を担う人々の仕事の重要性について、市民の理解を深めるよう努めるとともに、他のものが行う食育の推進に関する活動に協力するよう努めるものとする。

(食品関連事業者等の役割)

第8条 食品の製造、加工、流通、販売又は食事の提供を行う事業者及びその組織する団体は、基本理念に基づき、安全で、安心して消費できる食品の提供の重要性を認識し、食品に関する情報及び体験の機会を積極的に提供し、市民との意見交換が食に関する知識及び理解を深め、適切な食生活の実践に資するよう努めるとともに、他のものが行う食育の推進に関する活動に協力するよう努めるものとする。

(国、県等との連携)

第9条 市は、食育の推進に関して、広域的な取組については、国又は県その他の地方公共団体と協力して推進するよう努めるものとする。

第2章 施策の基本となる事項

(食育の推進に関する普及啓発)

第10条 市は、効果的な食育の推進を図るため、関係機関等相互の意見及び情報の交換等により、食育の普及啓発を行うために必要な施策を講ずるものとする。

(家庭における食育の推進)

第11条 市は、家庭における食育の推進のため、適切な栄養管理及び環境に配慮した食事に関する知識の普及、情報提供等により、市民が健全な食生活を図るために必要な施策を講ずるものとする。

(学校、保育所等における食育の推進)

第12条 市は、学校、保育所等における効果的な食育の推進を図るため、県の協力を得ながら、食育の指導にふさわしい教職員等を計画的に配置し、食に関する指導内容及び体制を充実し、食及び健康に関する知識を更に高めるとともに、食に関する多様な体験活動を行うことにより、子供たちの健康を確保するよう努めるものとする。

(地域及び関係機関との連携による食生活改善の推進)

第13条 市は、地域及び関係機関との連携において、健康的な生活習慣を確立するための健康づくり対策を推進し、健全な食生活に関する普及啓発を行い、健康づくりの担い手の育成に努めるものとする。

(地産地消の促進)

第14条 市は、地域で生産された農林水産物が、当該地域において積極的に消費され、学校、保育所等において利用促進が図られるよう努めるものとする。

(食文化の継承の推進)

第15条 市は、地域の伝統的な食文化の継承を推進するために必要な施策を講ずるものとする。

(生産者と消費者との交流)

第16条 市は、生産者と消費者との交流促進等により、食と生産の関連を意識付け、それぞれの思いを理解し、感謝の念を深めるために、食育の推進に関し相互の連携を図るよう努めるものとする。

第3章 推進体制等

(推進計画)

第17条 市は、食育の推進に関する施策を総合的かつ計画的に実施するため、柳川市食育推進計画(以下「推進計画」という。)を作成するものとする。

2 推進計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。

(1) 食育推進の趣旨及び指針

(2) 食育推進の方策及び目標

(3) 食育推進に関する施策の内容及び評価

(4) その他食育推進に関し必要な事項

(推進会議)

第18条 推進計画の作成及びその実施の推進のため、食育基本法(平成17年法律第63号)第33条第1項の規定に基づき、柳川市食育推進会議(以下「推進会議」という。)を設置する。

2 推進会議の所掌事務は、次のとおりとする。

(1) 推進計画の作成及びその実施の推進に関すること。

(2) その他食育の推進に係る重要事項に関すること。

3 推進会議は、委員20人以内で組織し、次に掲げる者のうちから市長が委嘱又は任命する。

(1) 食育に関し知識経験を有する者

(2) 食育に関係する団体の代表者

(3) 行政機関の代表者

(4) 教育関係者

(5) その他前項に規定する所掌事務の遂行のために必要と認められる者

4 委員の任期は、2年とし、再任を妨げない。ただし、委員に欠員が生じた場合の補欠委員の任期は、前任者の残任期間とする。

5 推進会議に会長及び副会長各1人を置き、委員の互選によってこれを定める。

6 会長は、推進会議を代表し、会務を総理する。

7 副会長は、会長を補佐し、会長に事故があるとき、又は会長が欠けたときは、その職務を代理する。

8 前各項に定めるもののほか、推進会議の運営に関し必要な事項は、規則で定める。

この条例は、公布の日から施行する。

柳川市食育推進条例

平成22年7月16日 条例第20号

(平成22年7月16日施行)