○柳川市掘割を守り育てる条例
平成19年3月27日
条例第6号
目次
前文
第1章 総則(第1条―第5条)
第2章 水環境保全に関する基本的施策(第6条―第17条)
第3章 審議会等(第18条・第19条)
附則
私たちが住む柳川市は、総延長がおよそ930キロメートルにも及ぶ大小の掘割が網の目のように巡り、独特な水郷風景を形成している。この掘割は現代に残された歴史的な文化遺産であり、それが持つ独特な情緒は詩聖・北原白秋の詩歌の母体ともなった。
掘割は、水をためることにより、降り過ぎた雨水を一時遊ばせて内水はん濫を防いだり、農業用水や防火用水等に利用されたりして生産や市民生活と直接にかかわる重要な役割を担っている。この掘割は、先人たちが風土の悪条件と闘い、水と共生していくなかで形成された貴重な柳川市の歴史的財産である。
これまで柳川市では、様々な施策を実施して掘割保全の努力を続けてきたが、近年の社会経済活動の拡大や都市化の進展、生活様式の変化などに伴い、柳川市においても生活排水や事業所排水等による掘割の水質汚濁や景観の変ぼうが進行している。さらに、掘割の水が流れ込む河川や海など周辺環境への影響も懸念されている。
言うまでもなく、すべての人は、健康で安全かつ快適な生活を営むことのできる恵み豊かな水環境を享受する権利を有すると同時に、こうしたかけがえのない水環境を維持し、発展させ、将来の世代に継承していく責務と使命を有することを忘れてはならない。
このような認識のもと、私たちは、市民、事業者及び市が一体となって、美しい柳川市の掘割を守り育て、市民が誇り得る郷土を育てることを決意し、水の憲法ともいえるこの条例を定める。
第1章 総則
(目的)
第1条 この条例は、柳川市の良好な水環境を保全し、及び創造することにより、柳川市独特の掘割を生かしたまちづくりを進め、もって現在及び将来の市民の快適で潤いのある生活の確保に寄与することを目的とする。
(1) 掘割 市内を流れるすべての水路(クリーク)をいう。
(2) 水環境 掘割とその周辺の環境及び景観をいう。
(3) 市民等 市民及び本市に滞在する者をいう。
(4) 事業者 市の区域内で行う事業について、自ら実施するもの又は契約により実施するものをいう。
(責務)
第3条 市、市民等及び事業者の三者は相互に協力し、それぞれの責任と自覚を持って掘割を生かしたまちづくりの推進に努めるものとする。
(1) 市の責務
ア 市は、良好な水環境の保全及び創造に関し、自然的社会的条件に応じた施策を策定し、実施しなければならない。
イ 市は、掘割の現状に影響を及ぼすと考えられる施策を策定し、実施しようとする際には、水環境の保全について配慮しなければならない。
ウ 市は、水環境の保全を妨げるような行為に関し、必要な規制の措置を講じなければならない。
(2) 市民等の責務
市民等は、良好な水環境の保全及び創造に自ら努めるとともに、この条例の目的を達成するために市が実施する施策に協力しなければならない。
(3) 事業者の責務
ア 事業者は、その事業活動を行うに当たって、良好な水環境を破壊しないよう自らの責任において必要な措置を講じなければならない。
イ 事業者は、市が実施する良好な水環境の形成に関する施策に積極的に協力しなければならない。
(適用区域)
第4条 この条例は、柳川市全域について適用するものとする。
(掘割の日)
第5条 市長は、市民の水環境保全についての関心と理解を深め、市民参加による水環境保全活動の意欲を高めるため、「掘割の日」を設ける。
2 掘割の日は、5月の第4日曜日とする。
3 市、市民等及び事業者は、掘割の日の趣旨にふさわしい事業を掘割の日又はその前後の一定期間に実施するよう努めなければならない。
第2章 水環境保全に関する基本的施策
(水質の保全)
第6条 市長は、生活排水等による掘割への負荷を軽減するために必要な施設の整備、生活排水対策の調査及び立案並びに啓発その他必要な施策の実施に努めなければならない。
2 市民等及び事業者は、市が実施する施策に協力し、自らも生活排水や事業所排水等による掘割の水質の汚濁に対し必要な対策を講ずるとともに、良好な水質を保全するため、次に掲げる行為に努めなければならない。
(1) 生活排水や事業所排水等を掘割に排出するときは、浄化槽、ためます等により浄化して排出すること。
(2) 調理くず、廃食用油等の処理を適正に行うこと。
3 何人も、柳川市用排水路管理条例(平成17年柳川市条例第126号)第4条に掲げる禁止事項を行ってはならない。ただし、同条中「水路」とあるのは、「掘割」と読み替えるものとする。
(流水の確保)
第7条 市長は、良好な水環境を保全するため、矢部川及び筑後川流域との交流と連携による相互理解並びに協力によって流水の確保に努めなければならない。
(親水性の確保)
第8条 市、市民等及び事業者は、護岸や柵など掘割の現状に影響を及ぼす施策を実施する場合は、日常的に水と親しめるような場所の確保に努めなければならない。
(景観の保全と創造)
第9条 市、市民等及び事業者の三者は、相互に協力して、水郷情緒に満ちた景観の保全及び創造のため、次に掲げる行為に努めなければならない。
(1) 塀は生け垣で緑化するなど良好な景観を形成すること。
(2) 護岸工事を行う場合は、安全に配慮しながら、可能な限り自然石等を用い、周辺を緑化すること。
(3) 生活排水や事業所排水等を掘割に排出する場合は、排水管を水面下に設置すること。
(自然環境の保全)
第10条 市、市民等及び事業者の三者は、相互に協力して、掘割及びその周辺の希少な動植物を将来の世代に継承していくため、掘割を愛護し、自然環境の保全に努めなければならない。
2 前条第2号の護岸工事を行う場合は、可能な限り生態系を壊さず、自然と共生できる工法を用いるよう努めなければならない。
(公共的施設の整備)
第11条 市長は、下水道や水利施設の整備その他水環境保全に資する事業を推進するため、必要な措置を講ずるものとする。
2 市長は、親水公園等の整備その他の良好な水環境の創造のための事業を推進するため、必要な措置を講ずるものとする。
(水環境管理体制の整備促進)
第12条 市長は、水環境の保全及び創造に関する施策(以下「水環境に関する施策」という。)を総合的に調整し、かつ、計画的に推進するために必要な体制を整備強化しなければならない。
2 市長は、水環境に関する施策の効率的かつ効果的な推進を図るため、市、市民等、事業者及び民間団体が協働することのできる体制の整備に努めなければならない。
(掘割を中心とする環境教育の振興)
第13条 市は、市民等及び事業者が掘割に対する関心を高め、水環境の保全についての理解を深めるとともに、活動を行う意欲が促進されるように、教育及び学習の促進を図るものとする。
2 市は、特に児童及び生徒に対して、掘割を中心とする環境教育及び学習を積極的に推進するために必要な措置を講ずるものとする。
(市民活動の推進)
第14条 市長は、市民等及び事業者が自発的に行う緑化活動及び水環境の保全に関する活動が促進されるように必要な措置を講ずるものとする。
(情報の提供)
第15条 市長は、前2条の規定を推進するため、環境の状況その他の環境の保全に関する必要な情報を適切に提供するよう努めるものとする。
(財政上の措置)
第16条 市長は、良好な水環境に関する施策を推進するため、必要な財政上の措置を講ずるよう努めるものとする。
(関係行政機関との連携)
第17条 市長は、良好な水環境に関する施策を推進するため、関係市町村等との連携を図るとともに、必要に応じ、国及び県に対して協力を要請するものとする。
第3章 審議会等
(審議会の設置及び所掌事務)
第18条 市長は、この条例の推進に関する重要事項を調査及び審議するため、柳川市掘割を生かしたまちづくり審議会(以下「審議会」という。)を設置する。
2 審議会は、この条例の推進に必要な事項を調査及び審議し、市長に提言するものとする。
3 審議会は、その所掌事務を遂行するために必要と認めるときは、市長に対し、資料の提出その他の協力を求めることができる。
(委任)
第19条 この条例に定めるもののほか、必要な事項は、市長が別に定める。
附則
(施行期日)
1 この条例は、平成19年4月1日から施行する。
(柳川市掘割を守り育てる条例の廃止)
2 柳川市掘割を守り育てる条例(平成10年柳川市条例第27号)は、廃止する。