○柳川市食料・農業・農村基本条例

平成18年9月20日

条例第31号

柳川市の農業は、筑後川及び矢部川の下流域に広がる筑後平野の西南に位置した田園地帯で、先人たちの優れた英知とたゆみない努力によって多種多様な農産物を生産し、市民生活や地域経済の発展に大きく貢献してきた。

今日まで、農業及び農村は、水と土を大切にしながら農産物を生産し、生命の源である食料を生産するだけでなく、水辺や水田の持つ美しい景観の形成、水源のかん養、洪水の防止等の多面的な機能を発揮する役割を担い、今後も変わることなく、健康で豊かな生活を支えていくために、極めて重要な意義を持ち続けると確信する。

しかしながら、近年、経済の国際化、農産物貿易の自由化、都市への一極集中と都市化の影響、食生活の多様化を背景に、農業者の減少や高齢化、食料の安全性への懸念等食料、農業及び農村をめぐる様々な問題が発生している。

このようなことから、今後、本市の農業及び農村の振興を進めていくためには、農業者の意欲向上はもとより、市民一人ひとりが、食料、農業及び農村の市民生活に果たしている役割の重要性についての理解を深め、地域で生産される農産物の域内での消費の促進を図ることが大切である。

私たちはここに、市民、農業者、農業団体及び食品産業の事業者並びに行政との協働により、食料に対する理解を深め、農業を本市の基幹産業として育みながら、魅力ある農村を次世代に引き継ぐとともに、その進むべき道を明らかにするため、この条例を制定する。

(目的)

第1条 この条例は、本市の食料、農業及び農村の振興に関する施策について、基本理念及びその実現に必要な基本的施策に関する事項を定めることにより、農業者の意欲の向上を図るとともに、食料、農業及び農村に対する市民の理解を深め、もって本市の農業及び農村の環境に配慮した持続的発展並びに市民の健康で豊かな住みよい地域社会の実現に寄与することを目的とする。

(基本理念)

第2条 食料は健康で豊かな生活を支えるものであることから、安全で安心できる農産物が安定的に生産され、供給されることにより、将来にわたって食料に対する市民の信頼が確保されるとともに、地域で生産される農産物の域内での流通及び消費を促進し、食の重要性に対する理解の促進と地域特有の食文化の継承が図られなければならない。

2 農業においては、農地、農業用水その他の農業資源及び担い手や農業者が確保され、地域の特性に応じた収益性の高いゆとりある農業が営まれ、かつ、良好な自然環境と調和した持続的な発展が図られなければならない。

3 農村は、食料の生産のみならず、多面的機能(食料・農業・農村基本法(平成11年法律第106号)第3条に規定する多面的機能をいう。以下同じ。)を有し、自然と人間との共生ができる調和のとれた空間として整備され、かつ、保全されなければならない。

(市の責務)

第3条 市は、前条に規定する基本理念にのっとり、食料、農業及び農村の振興を図り、安全で安心できる農産物の安定した生産を維持確保し、魅力ある自然環境と景観を維持保全するための総合的な施策を行うものとする。

2 前項の施策を進めるに当たっては、地域の特性を尊重し、地域間や産業間の調和と融合に努めるとともに、農業団体や国、県などの機関との連携を図り、農業者と市民の理解と積極的な参画が得られるよう努めるものとする。

(農業者及び農業団体の役割)

第4条 農業者及び農業団体は、自らが安全な食料の生産者であり、基本理念に示す農村における地域づくりの主体であることを認識し、安全で安心できる農産物を安定的に生産し、収益性の高い、ゆとりある農業経営の確立に向け、創意工夫を生かした効率的な農業生産及び魅力ある農村づくりに主体的に取り組むよう努めるものとする。

(市民の役割)

第5条 市民は、食生活の重要性を認識し、特に成長過程にある子供の食生活が健全で豊かなものになるよう心がけるとともに、食料、農業及び農村の役割並びに意義に対する理解を深め、地元農産物の消費及び利用を進めること等により、農業及び農村の振興に協力するよう努めるものとする。

(事業者の役割)

第6条 食品産業の事業者は、食料、農業及び農村が市民生活に果たしている役割の重要性についての理解と関心を深め、消費者への安全で安心できる食料の円滑かつ安定的な供給に努めるものとする。

(基本的な施策)

第7条 市は、第2条に定める基本理念にのっとり、次に掲げる施策を、食料、農業及び農村の基本的な事項として、各々の施策相互の有機的な連携を図りつつ推進するものとする。

(1) 農業経営に意欲ある担い手とその後継者の育成及び確保に必要な施策並びに女性農業者、高齢農業者、新規就農者等の多様な農業者の育成に必要な施策

(2) 実需者を重視した需要の動向に応じた農産物の生産、新たな需要を創出する品種及び品目の導入等による収益性の高い農業経営の確立並びに競争力のある産地の育成に必要な施策

(3) 良好な営農条件を確保するための生産基盤の整備、自然環境に配慮した農業水利施設等の整備、優良農地の確保及び多面的機能を十分に発揮させるための環境整備並びに安全で快適な生活環境の整備等による魅力ある農村づくりに必要な施策

(4) 地元農産物に関する情報提供の促進等による消費者の信頼及び消費意欲の向上に必要な施策

(5) 農薬及び肥料の適正な使用、家畜排泄物等有機物資源の有効利用による地力の増進等に基づく環境に優しい有機農業の推進並びに自然循環機能の維持増進に必要な施策

(6) 市民が、安全で安心できる農産物を入手し、食と農に対する信頼関係を築くために必要な産地情報の提供等の施策

(7) 学校、家庭及び地域社会等と連携した食と農に関する教育等及び健全な食生活への理解の促進並びに地域で生産される農産物を使った地方の食文化の継承に必要な施策

(8) 産地銘柄の確立、農業者及び農業団体と、消費者及び食品産業の事業者との連携の強化等による地元農産物の販売、消費及び利用の促進に必要な施策

(9) 農業及び農村に関する情報の提供、農業体験機会の拡大、都市と農村との間の交流の促進等、農業及び農村に対する市民の理解と関心を深めるために必要な施策

(10) 女性農業者の社会的経済的地位の向上、就業条件の整備及び農業政策等の意思決定への参画促進等の環境整備による男女共同参画社会の確立に必要な施策

(基本計画の策定)

第8条 市長は、前条に規定する基本的施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、安全で安心できる食料の供給並びに農業及び農村の振興に関する基本的な計画(以下「基本計画」という。)を定めなければならない。

2 市長は、基本計画を定めようとするときは、あらかじめ広く市民の意見が反映されるよう十分に配慮するとともに、第11条に規定する柳川市食料・農業・農村政策審議会の意見を聴かなければならない。

3 市長は、基本計画を定めたときは、延滞なく、これを公表しなければならない。

4 市長は、食料、農業及び農村をとりまく情勢の変化を勘案し、おおむね5年ごとに基本計画に検討を加え、必要があると認めるときは、これを変更しなければならない。

5 第2項及び第3項の規定は、基本計画の変更について準用する。

(実施状況の公表)

第9条 市長は、本市の食料、農業及び農村の状況並びに基本計画に基づく施策の実施状況をとりまとめ、毎年、公表するものとする。

(推進体制)

第10条 市長は、安全で安心できる食料の供給並びに農業及び農村の振興に関する施策を総合的かつ計画的に推進するための体制の整備に関し、必要な措置を講ずるものとする。

(審議会)

第11条 食料、農業及び農村に関する基本的事項並びに重要事項を調査審議するため、市に柳川市食料・農業・農村政策審議会(以下「審議会」という。)を置く。

2 審議会は、市長の諮問に応じ、次に掲げる事項を調査審議する。

(1) 基本計画の策定、施策の実施状況及び変更に関すること。

(2) 前号に掲げるもののほか、食料、農業及び農村に関する重要な事項

3 前2項に定めるもののほか、審議会の組織及び運営に関し必要な事項は、規則で定める。

この条例は、公布の日から施行する。

柳川市食料・農業・農村基本条例

平成18年9月20日 条例第31号

(平成18年9月20日施行)