○救急業務等における感染防止対策要綱
平成17年3月21日
消防本部訓令第53号
(目的)
第1条 この訓令は、他の法令に定めるものを除き救急業務、応急手当普及啓発等における感染事故を未然に防止することを目的とする。
(感染防止対策の基本)
第2条 救急隊員の感染防止対策は、ウイルス、細菌等が血液、精液、唾液、空気等(以下「血液等」という。)を介し、伝播形式をとることを踏まえ感染防止対策をさらに徹底することを基本とし、今後学問の進歩、研究とともに改定を加えていくべきものであることを前提に、当面とるべき事項についてその対策を推進して行く。
なお、対策を進めるに当って、後天性免疫不全症候群(以下「エイズ」という。)、肝炎患者等をいたずらに特別視し、その感染防止を強調するあまり救急隊員の傷病者への接触の忌避や志気の低下を招くことのないよう留意するとともに、傷病者のプライバシー保護に十分配慮するものとする。
(資器材の整備)
第3条 救急隊員の感染防止対策用としてディスポ手袋、紙マスク、腕カバー、靴カバー等を整備する。
(消毒用薬剤等の整備)
第4条 感染防止用消毒薬剤及び器材として、次亜塩素酸ナトリウム、グルタールアルデヒド(ステリハイド)、消毒用エタノール、石鹸、手指消毒器、殺菌ロッカー、紫外線殺菌装置、ガス滅菌器等を整備する。
(救急活動の原則)
第5条 救急隊員の接する傷病者は、あらかじめエイズウイルス、ウイルス性肝炎等の感染者かどうか知ることができない点に留意し、救急業務の実施に当たっては、傷病者の血液等への直接接触を避けて活動するものとする。また、救急業務遂行中に手指等に創傷を作ることのないように十分注意するものとする。
(手袋等の着用)
第6条 気道確保、酸素吸入、人工呼吸、止血、創傷処置等の応急処置を実施する場合及び応急処置実施時血液等の飛散が考えられるときは、手袋等の感染防止資材を着用するものとする。
(人工呼吸の実施)
第7条 人工呼吸(補助呼吸を含む。)の実施に当たっては、人工呼吸器及びバッグマスクの使用を原則とする。やむを得ず、呼気吹き込み人工呼吸を実施する場合は、傷病者の口腔を十分吸引、清拭した上で、傷病者の状況に応じ、できる限りポケットマスク、滅菌ガーゼ等を適切に使用し、口対口の直接接触を避ける。
(資器材等の処置)
第8条 救急活動中における資器材等の処置は、次のとおりとする。
(1) 使用した資器材は、救急活動現場において、滅菌ガーゼ等の使い捨てと消毒処理を要する再使用資器材とに区分して、速やかにビニール袋等に収納する。
(2) 血液等が皮膚に付着した場合は、現場若しくは車内又は医療機関において、できる限り速やかに石鹸等を用い流水で洗浄する。
(3) 血液等が創傷に付着した場合は、消毒用エタノール液又は次亜塩素酸ナトリウム等で消毒する。
(活動終了後の対策)
第9条 救急活動終了後における資器材等の消毒は、次のとおりとする。
(1) 救急隊員
ア 手指の消毒は、前腕部を含めて石鹸を用いて流水にて入念に手洗いを行うこと。
イ 皮膚に血液等の付着がある場合には、特に念入りに洗浄した後、消毒用エタノール又は次亜塩素酸ナトリウムにて消毒を行うこと。
なお、次亜塩素酸ナトリウムを使用した後は、石鹸を用いてよく洗浄すること。
ウ 口腔内は、うがい薬等でよくうがいをすること。
エ 血液等で汚れた出動服は、救急隊専用の洗濯機で洗い殺菌ロッカー等で殺菌後に使用すること。
オ 全身が汚れた場合は救急隊専用シャワーで全身を洗浄すること。
(2) 救急資器材等
ア 使用した資器材で医療機関に処分を依頼できない場合は、ビニール袋等に入れて持ち帰り焼却等の方法により処理すること。
イ 救急資器材の洗浄、消毒時には、手袋(作業用ゴム手袋)を着用すること。
ウ 再使用する資器材については、紫外線殺菌装置、ガス滅菌器、殺菌ロッカー等にて消毒処理を行うこと。処理をするに当たっては、資器材を流水にて洗浄した後、消毒を行うが流水による洗浄ができない資器材については、薬剤による清拭を行うこと。消毒薬剤は適応する薬剤を選定し、各薬剤の効能、使用上の注意事項を理解、遵守して使用すること。
エ 口腔内の清拭、吸引等に使用した資器材又、気道確保、人工呼吸、止血等で使用した資器材については、グリータールアルデヒド、消毒用エタノール液等で、清拭を行った後、流水による洗浄が可能なものは洗浄を行い、その後、滅菌又は消毒を行うこと。
(3) 救急自動車
ア 救急自動車内部は、水洗い、薬剤による清拭、紫外線殺菌装置等による滅菌の手順によるが、水ぬれを避けなければならない箇所は薬剤による清拭を行い、実施に当たっては手袋(作業用ゴム手袋)を着用すること。
イ 消毒薬剤は適応する薬剤を選定し、各薬剤の効能、使用上の注意事項を理解、遵守して使用すること。
ウ 救急自動車内部の血液等にて、汚染している箇所及び汚染が疑われる箇所は、直ちに次亜塩素酸ナトリウム、グルタールアルデヒド等による清拭を行った後、流水により十分洗浄し、紫外線殺菌装置等による殺菌を行うこと。
エ 水洗い後、不織布(セーム皮)等で拭き取る場合の不織布は、一般車両用と普段から区分したものを使用(救急隊専用とすること。)し、使用後は十分水洗いし、殺菌ロッカー等で十分殺菌すること。
オ 水洗い等で使用するブラシ、バケツ等は一般車両と区分したものを使用すること。
2 消毒資器材、救急自動車等の消毒の実施当たっては、消毒剤の薬害に十分留意してマスク、保護メガネ等を使用して実施しなければならない。
(エイズ等の患者を搬送した場合の対策)
第10条 搬送した患者がエイズ、ウイルス性肝炎、MRSA、法定伝染病等の伝染性の患者と判明した場合は、前条の規定によるほか、次のことを必要により実施する。
(1) 医師の指示があれば、救急隊員の血液検査を実施する。
(2) 必要により感染の有無を確認する。(追跡調査を行う。)
(3) 必要により医師から健康管理に関する指導を受ける。
(4) その他医師の指示する事項
(感染防止教育の実施)
第11条 エイズ等の感染防止対策を図るため消防署長は、救急隊員に次の教育を実施する。
(1) 手洗い、うがいの励行、私的生活での節制、体力増進の必要等の衛生観念及び健康管理
(2) 各種感染症の伝播形式、発症までの経緯、感染症患者を取り扱った場合の措置及び伝染病予防法等の感染症に係わる関係法規(関係機関への連絡方法等含む)の修得
(3) 救急隊員、救急資器材、救急自動車等の殺菌消毒法、消毒剤に関する知識
(4) 救急隊員のみならず傷病者も感染から守るという観点から、人工呼吸、止血、口腔内清拭、異物の除去等感染のおそれのある応急処置を行う場合の感染防止対策並びに救急資器材の取扱い及び保管方法
(5) 傷病者の個人情報保護
(救急広報実技指導における留意事項)
第12条 市民に対する応急処置の普及啓発に当たっては、応急処置の知識及び技術の普及と併せて応急処置を実施する場合の感染危険について注意し、次の留意事項を指する。
(1) 気道確保を行う場合
ア 原則として口腔内の吐物、異物への直接接触を避けるとともに、もし触れた場合には、速やかに石鹸等を用いて流水により洗い流すこと。
イ 手指等に創がある場合には、身近にある清潔なビニール製品の一部を手指に巻き実施すること。
(2) 人工呼吸を行う場合
ア 傷病者の口、鼻に直接接触しないように、口唇部にハンカチ等を当てて実施すること。
イ 使用したハンカチ等は、速やかに洗濯すること。
ウ 実施後は、速やかにうがいをすること。
(3) 止血処置を行う場合
ア 素手で、直接血液に触れないよう、また、血液飛沫が身体に付着しないように注意すること。
イ 手当終了後、速やかに石鹸等を用いて流水による手洗いを行うこと。
(4) 包帯等を行う場合
ア 素手で、直接血液に触れないように、また、血液飛沫が身体に付着しないように注意すること。
イ 手当終了後、速やかに石鹸等を用いて流水による手洗いを行うこと。
(訓練用人形を用いて指導する場合の感染防止対策)
第13条 救急実技指導の現場において、心肺蘇生法訓練用人形を用いて人工呼吸の訓練を行う場合は、参加した住民等が伝染性の病気等に感染することのないよう、次の方法により実施する。
(1) 消毒薬剤使用による方法
ア 訓練時
(ア) 使用前に訓練用人形の顔及び口腔内を70%消毒エタノールに浸したガーゼ等で清拭し、乾いたガーゼ等で拭き取ること。
(イ) 訓練実施時には、各受講者の訓練終了ごとに前「ア」により消毒を行うこと。
イ 訓練終了後
(ア) 訓練人形の頭部気道部、胴体内気道部の各部品を0.1%から0.2%までの次亜塩素酸ナトリウム、又は70%消毒用エタノールで清拭すること。
(イ) 清水で各部品の消毒液を洗い流し、完全に乾燥させること。(消毒用エタノールの場合には省略。)
(ウ) ディスポーザブル肺は、実技指導終了後、必要により交換すること。
(2) マスク使用による方法
ア 訓練時
(ア) 訓練用人形の口唇を上記(1)ア(ア)により消毒を行うこと。
(イ) 訓練用人形の鼻、口部にマスクを置き、完全にかぶせること。
(ウ) 訓練を終えた受講者は、顔マスクを取外し、訓練用人形の口唇及び顔マスクを上記(1)ア(ア)により消毒を行うこと。
(エ) マスクは、訓練終了後にビニール袋等に入れて一括回収し、焼却処分すること。
イ 訓練終了後
(ア) 訓練を終えた訓練用人形は、石鹸水等で洗い、さらに清水で洗い流す。
(イ) 訓練用人形の消毒は、上記(1)イにより行う。
(連絡通報体制の整備)
第14条 救急隊員の感染防止の観点から、消防署長は医療機関から消防機関への連絡通報体制を確立する。
2 消防署長は、適切な指導を受けるため医療機関、産業医等の協力体制を確立しなければならない。
(再発防止)
第15条 万一、救急隊員が感染した場合には、原因の究明と再発の防止に努めるとともに、当該救急隊員の個人情報の保護と必要に応じた健康管理を実施する。
2 感染した職員は業務に支障がない場合、通常業務に従事することは差し支えないが必要により産業医等を通じて適切な指導を行う。
(その他)
第16条 この訓令に定めるほか必要な事項は適宜、救急救助係長及び救急隊長が指示するものとする。
附 則
この訓令は、平成17年3月21日から施行する。